探す【男主】 (ページ1)

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　何という名前の国の、何という名前の地域かも知らないけれど、そこで自分は生かされていた。
　広い家に両親と自分。その地域の中では裕福な家族として暮らすことが出来ていたらしい。
　らしい、というのは、自分はその恩恵を受けることが出来ずに居たからだ。
　日に日に増えていく痣に、両親の怒鳴り声。時たま家の外に放り出されては、親と手を繋ぎ楽しそうに歩く家族をまざまざと見せ付けられる。自分が幸福な立ち位置に居ないことを知り得たのは、齢にして5歳の頃だった。

　今日もまた、両親から痛みを与えられた。「痛い」と泣けば「煩い」と殴られ、静かにしていれば「気味が悪い」と殴られる。今日は何時にも増して機嫌の悪い日だったらしく、3日に1回の食事も与えられないまま家の外へと放り出された。裏口側なら人通りはないし、「まさかあの裕福な家庭が」とこんな事実を発見されることもない。日が暮れればまた髪の毛を掴まれて、家に引き戻されるのだから。

　痛みと空腹にいつものように耐えていると、人通りが無かった裏口を一人の子供が歩いていく。
　その子供は自分のことを見て、驚いた表情を顔に浮かべた。

「え、怪我、なんで」

　なんでもない素振りをしようとするものの、今日は顔を重点的に甚振られたため上手く笑うことができなかった。
　その子供は何かを決心すると、自分に向かって歩みを進め、手を差し出す。

「怪我、なんとかせんと。うち来てや」

　七三分けの彼は、赤いマフラーをたなびかせてそう言った。