探す【男主】 (ページ11)

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　それから、幾ばくかの年月をそこで過ごした。
　最初は「Aひょろいんやなあ」と言われ食糧を調達しに行くことが出来なかった自分も、ゾムと一緒に運動したり、男に体術を教わったりしていくうちに、ゾム程とは言えなくともそこそこ動けるようになっていった。
　身体には虐待の傷痕が数多く残っているが、「生きるのを諦めなかった、お前の勲章だ」と男に言われてからは、むしろこの傷を誇りだと思えるようになった。

　ゾムにも話しておいた方がいいかと思い、自身のこれまでの過去を洗いざらい話した。ゾムも似たような境遇であったらしく、「俺も傷とか残ってんけど、やっぱ痛かったよなあ」と同調し、一緒に泣いてくれた。
　それが「同情」では無かったことが、自分にとって救いにもなり、一人で知らずの内に抱え込んでいた重荷を、少しだけ降ろすことができたのだ。

　「僕」だった一人称も、ゾムや男の影響で「俺」に変わっていき、月日は過ぎて、生まれ落ちてから15年が経とうとしていた。

「さて、今日は俺も着いて行こうかね」

　いつもは食料調達を自分とゾムに任せている男が、今日はそんな事を言い放った。「危ないんちゃう？」とゾムがからかうように言えば、「お前に基礎を叩き込んだのは誰だと思ってんだ」と小突かれていた。
　男が食料調達を任せっきりにしているのは、自分とゾムの体術向上も勿論だが、男の体力が衰えを見せているからでもある。「最近腰が悪くてなあ」とゾムの手合わせを断っているのが良い証拠だった。
　だがそれもここ半年程の話で、その前までは自分が危なっかしいから、という理由で度々着いてきていた。
　ゾムが世に言う反抗期(？)のような時期には、「俺はAと2人で生きていけるんや！邪魔すんなや！」と怒鳴り散らしていたのに、今日はすんなり男が着いてくることを受け入れたことに、感慨深い気持ちを抱く。

「ゾムとAの成長具合を見てやろうと思ってな」

　猟銃の準備をしながら、軽く自分の頭を撫でる。男がそう言うのであれば、自分が止める言葉は特に見当たらない。男の前でヘマをしないように、と自身を奮い立たせ、「はよ行こうやー」と扉の前で待っているゾムに駆け寄った。