探す【男主】 (ページ17)

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　それからまた数年。あの時、あの場所から歩き続けてから、パン屋を開いている主人に拾って貰い、「我々国」という国(のパン屋)に居候させて貰うことになった。
　怪しまれないように、という気持ちから自分の出生を1から全て話すと、「今まで大変だったな」「もう貴方をそんな目に遭わせないようにするから」と自分の事を哀れんでくれた。それがなんだかむず痒いような、でも不思議とそれは不快ではなかった。

　このパン屋は我々国の中でも辺境に位置しているらしく、材料や雑貨の仕入れでも街の方へ足を進めないといけないらしい。それが難点ではあるが、それに目を瞑ればとても穏やかで、生活のしやすい環境だった。
　森で培った体術で、近くの林で食糧を調達したり、たまにお使いで街の方へ繰り出したり。パン屋の手伝いをするのは、「これはちょっとコツがいるからなあ」と渋られてしまったが、それを除けば居候らしく、恩返しを少しずつしながら暮らしていた。

「Aくん、ちょっと買ってきてほしいものがあるんだけど…」

　パン屋の婦人に、そう頼まれて街に繰り出していた。買い出すものは小麦粉、それとパンに使うのであろう材料だった。断る理由もなく、二つ返事で承諾。
　街はいつも通り、より人が多く、何かの行事でもあるのか？と思う程だった。特に中央通りは、何かを待つ人でいっぱいだった。

「…この辺で何かあるんですか？」
「うん？今日は総統が街へ降りられる日なんだ。知らせが届いて無かったか？」

　この人の多さは、それが原因か。辺境にまで報せは届いていなかったようで、ありがとうとだけ伝えて店を出た。買う物も買ったし、この人の多さには少し目眩がしてしまう。さっさと退散してしまおう、と人の群れを掻き分け、人通りの少ない路地に足を踏み入れた。

「……あ？」

　路地裏では、軍服を着た肉塊を射殺した後であろう男が、一服しているところだった。