探す【男主】 (ページ20)

今日:14 hit、昨日:27 hit、合計:7,758 hit

20 ページ20

：

「二度目になるが、私はグルッペン･フューラーという」

　その名前は確かに、以前聞いたことのある名前だった。その名前を聞いた後、ゾムはこの男が率いていた軍人に引き連れられたんだったか。

「……なんで、俺だと？」
「私が、お前を引き入れなかったことを悔いていたからだ」

　そう言うと、グルッペン･フューラーは席から立ち上がり、俺の前まで来て頭を下げて。

「……え？」
「すまなかった」

　そう謝罪をしたのだ。

「いや、え？」

「あの時、お前を侮辱するようなことを言った。どの分野においてどんな才能を持っているかは、本人にしか知り得ないことだ。それを否定することは、上に立つ人間としてしてはならないことだった」

　軍に居ても約立たず、だと言われたことを、思い出した。特に気にしないように、自分より優れた人間がいたのだから、自分など目を向けられなくとも当然なんだと思ってはいたが、それをこの総統は、悔いていたと言う。そうしてもう一度、すまなかったと男は謝罪する。

「大丈夫です、俺は。…ありがとうございます、気にかけてくれて」

　総統は、ニヤリとした笑みではなく、自分に向かって微笑みを見せた。

「今更だが、軍に入らないか？あの観光客は中々の手練でな、それを倒せた実力は、是非ともうちの軍に欲しいと思うのだが」

　そう自分の両肩に手を置き、キラキラとした目で入隊を迫る総統。普通に考えれば、総統自らに勧誘して貰えるのは有難いことだと思うのだが、どうしても小さい子供が玩具を欲しいと言っているようにしか聞こえず、思わずクスリと笑ってしまった。

「む…俺は本気だゾ？」
「ああいえ、分かってます。…考えさせて貰っても、いいですか？」

　少しムスッと拗ねてしまった総統にそう告げると、みるみるうちに表情が明るくなっていく。

「本当か！？家はどこだ？迎えを向かわせよう！」

　入ると決めたわけではないのだが…。今の彼には届かないだろう言葉はしまっておいて、素直に家の場所、今は居候の身であることを伝えた。

「ああそうだ…、ゾムは我が軍にいる。安心して良いゾ」

　ゾム、という単語にビクリと肩を震わせた。ああ、ゾムはまだ生きているんだな、と少し安心する。

「…ありがとう、ございます」

　ああ、早く会いたい。