探す【男主】 (ページ24)

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　Aはトントンの家から飛び出した後のことを、ゆっくりと話し始める。
　行く当てもなく森に入ってしまったところを、ある男と少年に助けられたこと。それから暫くそこで過ごすことになったが、男が亡くなったためそこを離れ、今はこの国の郊外にあるパン屋に世話になっていること。
　話を聞いていたシャオロンは、「色々大変やったんやな」とAに言葉を掛ける。

「その男の子？は一緒やないん？」
「ああ、いつだったかこの国の軍に連れていかれて……。でも、今も軍にいるらしいです。さっき総統閣下に教えてもらったので」
「え、そうなん？じゃあ会えるんちゃう？」
「そう、かもしれないですね」

　Aが少し嬉しそうに頬を緩めたとき、トントンが持っていたティーカップをがちゃんとソーサーに置いた。

「……俺のときは、そんな嬉しそうやなかったくせに……」
「……え？」

　ぼそりと呟くそんな言葉に、シャオロンがにやにやとA達を見る。

「おや？トントンさん妬いてるんすか？」

　トントンはシャオロンにそう指摘されて、そっぽを向いた。違うと否定しないのは、図星だったということなのだろうか。
　そうだとして、それは誰に──など、考えなくとも文脈からしてその少年なのだろうと分かる。

「あの、トントン」
「……まあ、そいつのが付き合いは長かったんやろうし。正直、俺も俺のこと覚えとるとは思っとらんかったから」

　どこか拗ねたようにそう言い放つトントンに、幼い頃の悲しそうにAを見るトントンと面影が重なる。
　Aは再度トントンの名前を呼んだ。

「さっきは、びっくりして。……その、嬉しくないように見えたかもしれないけど。ずっと、トントンに会いたいって思ってたから、こうしてまた会えて嬉しい」
「…………おん」
「それに、俺が死なずに、こうして今も生きていられるのは、間違いなくトントンのお陰だから。……だから、ありがとう」

　ありのまま、思っていることを伝える。あの時、トントンに出会っていなければ、こうして生き長らえていることは無かっただろうと、Aは思っている。食事を、知識を与えてくれたことを、Aはこれから先何があっても忘れることはない。再び会えたことを、喜ばないはずなどないのだ。