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トントンはばつが悪そうに頭を搔き、「いや……俺も大人気なかった。すまん」と言い席を立つ。姿を見るにトントンの持つティーカップには紅茶が無かったため、追加を淹れるのだろうと推察した。
シャオロンはというと、嫉妬するトントンが見れたことが余程嬉しかったのかにやけた顔のままだ。
「珍しいもん見たな〜」
煽るような口調に水場に立つトントンが「やかましい」と一喝した。
「そや、名前とか分からんの？」
「名前？」
「そう、その男の子の名前。一般兵なら探すん大変やけど、見つからんことはないで」
そう問われるのは、ゾムのことだ。軍にいると聞かされて、Aは生死が分かって安心していた。会えるといいとは思っているが、どうしても会いたいかと言われると微妙なところだった。
トントンは覚えてくれていたが、ゾムはどうだろうか。見知らぬ人間に「久しぶり」と声を掛けられて、迷惑ではないか。
そんなことを考えていると、トントンが再び席に腰掛ける。Aに「何考えとんか知らんけど」と前置きをして、こう告げた。
「多分、そいつも覚えとるやろ。……お前が俺のこと忘れてんちゃうかって言っといて、どの口がって話やけどな」
「……そうかな」
「まあ、話し掛けんでも、遠くから一目見るだけなら構へんやろ。姿見るだけでも、ええと思うし」
「ほんまに向こうがAくんのこと覚えとったら、Aくん取られてまうかもしれへんしな」
「……そんなに書類増やして欲しいんか〜シャオロン」
「ちゃうやんかトントンさ〜ん」
二人の掛け合いを横目に、Aはトントンの言い分に納得していた。姿を見るだけで、生きていることが確認できれば、それで十分だと。
あの、と口を開こうとしたとき、書記長室のドアがノックされる。トントンが「入れ」と声を掛けると、一人の男が入室する。
「書類持ってきてんで〜、……て」
それは、緑色のパーカーに身を包んだ男だった。
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作者名：金欠 | 作成日時：2024年3月31日 21時
