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「おお、ゾムか。今確認するわ」
トントンはそう言うと、男──ゾムの持ってきた書類を受け取り、その場でパラパラと確認し始め、
ようとしたところでその手は止まる。何故なら、ゾムがAに向かって体当たり(のように見えた)し、彼を押し倒していたのだから。
「ちょ、ゾム！？」
「おま、何してんねん！ はよ離れろ！」
シャオロンとトントンが声を荒らげる中、Aは男に正真正銘抱き着かれていた。すんすんと首元に擦り寄られ、離さないという意志を持った腕で拘束されている。
「A、Aの匂い、する」
「………ゾム」
「なんで、なんでおらんくなったん？ 俺、いっぱい探してんねんで、あの森、やのに、なんで」
顔をあげたゾムは、目いっぱいの涙を浮かべていた。
「あの人も死んどるし、Aもおらんし、……Aまで、し、死んだんちゃうかって、お、おれ、」
「ゾム、……ゾム、ごめん」
「ゆ、ゆるさへん、しんだら、おれになんもいわんと、どっかいったら、」
ぽたぽたとゾムの瞳から雨粒が落ちる。どうすれば止めてあげられるのか、考えたけれどAに大したことは思い浮かばなかった。
ただ、名前を呼ぶ度に強くなっていく手の強さがどうにも痛々しくて、せめてそれだけでもどうにかしてあげられないかとゾムに向かって手を伸ばすと、その手は呆気なくゾムに捕まってしまった。
「いや、いやや、Aがおらんのは、もう」
懇願するようにAの手を己の頬に添える。そうしてゾムの顔が、勘違いではなく徐々にこちらへ近付いてくるのをどうすることもできずに眺めていると、身体に感じていた力が急に弱まった。
「Aから、離れろ言うとるやろ！！！！」
ゾムを引き剥がしたトントンが叫ぶ。シャオロンはご愁傷様とでも言いたげに苦笑いしていた。
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作者名：金欠 | 作成日時：2024年3月31日 21時
