探す【男主】 (ページ27)

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「あの、ゾム……」
「ん、なに？」

　ぴったりとAに張り付くのは、今しがたトントンから引き剥がされたはずのゾムだった。
　ゾムの態度の急変ぶりにトントンとシャオロンから「詳しく話せ」と詰められ、先程シャオロンと一緒に座ったソファに今度は(引き剥がしきれなかった)ゾムと座っている。

「さっき話した男の子、っていうのが」
「……まあ、ゾムなんやろなあ」

　状況証拠的にそうだろう、と確信していても確認してしまうのは、自分がそれほど動揺しているからなんだろうとトントンは考える。

「確かにゾムって、グルッペンに引っ張られてきたて言うてたもんな」

　シャオロンが納得したとでも言うように頷いた。

「……いい加減Aから離れろって」
「ん？いやや！」

　トントンの想いも虚しく、ゾムはにっこりと笑って申出を拒否した。ゾムに掴まれている左腕は痛みはないものの、絶対に逃がさないという意志が嫌でも分かる。

「……なんであの森から居らんようなってん」
「あの人が死んだから。墓、みたいなものは作ってみたんだけど」
「ああ、見たで。……今は？どこ居んの？」
「郊外のパン屋にいる。居候みたいな感じかな」
「ふうん。……此処に住んだらええやん」

　次々と繰り出される質問の最後に、ゾムはそう言った。しかしトントンはそれに難色を示す。

「軍の人間でもないAは住めへんやろ」
「なら俺の部屋に居ったらええ。任務でほぼ使ってへんし」
「そういうことちゃうねん……」

　ゾムは何でもないことのように言うが、シャオロンはゾムのAに対する態度に驚いていた。
　ゾムとはほぼ同期のようなもので、軍に入ってから正式に部隊に配属されるまでは行動を共にすることが多かった。
　入りたての頃は訓練に参加しない問題児で、たまに参加したと思えば鬱憤を晴らすように訓練兵を伸し、気が済めばまた自室に篭ってしまう。同室に割り当てられたシャオロンもなんとかコミュニケーションを取ろうと模索していたが、来るもの全て拒むような素振りに流石のシャオロンも心が折れかけた。まあ、結果的に折れなかったから今こうして軽口を叩けるようになったのだが。