探す【男主】 (ページ28)

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　そんな過去があるため、ゾムは人間関係に対して何かしら潔癖なところがあるのだろうと思っていた。こうしてべたべたと触れ合うことも、縋り付くような真似も、疎んでいるものとばかり。
　幹部の中では末っ子気質のあるゾムだが、こうして甘えるような素振りを他人にしているところを、シャオロンは見たことがない。
　それだけAという存在がゾムにとって大切なんだろう。素直に甘えられる人が一人でも居て良かったとシャオロンは内心安堵していた。

　ただ、そんな様子をまざまざと見せつけられているトントンは面白くなさそうだった。

「……A、腕大丈夫か？」
「え、ああ。見た目ほど痛くもないし、加減はしてもらってるから」
「……そうか」

　トントンは膝の上でぎゅ、と拳を握る。恐らく無意識なその行動に、疑問を抱いたのはゾムだった。

「A、トントンと知り合いなん？」

　そう問われて、Aはゾムと会うまでにトントンに世話になっていたことを話す。聞き終えると「へえ……」となんとも煮え切らない相槌が返ってきた。
　Aの知らないところで預かり知らない戦いが水面下で始まろうとする雰囲気の中、そういえば、とシャオロンが口を開いた。

「グルッペンがAくんのこと勧誘してたで。Aくん、α国の観光客捕まえとってん。やから今日此処におるんやけど」

　トントンとゾムはそれを聞くや否やAに向き直り、「じゃ、じゃあAと一緒に……！」「グルさん今日だけは感謝するで……！」と期待に満ち溢れた目でAを見る。
　Aはというと、二人の中ではもう軍に入ることが決まっているんだろうなと察せてしまって、少し居心地が悪そうにしていた。

「二人とも落ち着けって。まだAくんが入ってええって言うてるわけちゃうし、今日は日暮れる前に帰らなあかんから。あんまプレッシャーかけたんなや」

　シャオロンがそう言うと、二人は前のめりになっていた身体を直す。

　窓の外を見ると、橙色の夕日が街を溶かしこんでいく途中だった。