探す【男主】 (ページ4)

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　あの日以来、彼もといトントンの家にお世話になることが多くなった。
　両親に外に放り出されると、トントンが自分の手を引いて家まで連れて行ってくれる。傷はあまり大袈裟に治療をすると気付かれてしまうため、酷い傷が化膿しないように手当てをし、その後トントンとトントンの家族と食事をする。そして午後5時の鐘が鳴れば裏口へ戻っておく。
　自分の家へ帰る時には決まってトントンが悲しそうな、不満そうな顔をするけれど、引き留めてもどうにもならないことを理解しているのか「帰るんか」と渋ることはなくなった。

　トントンの家に居る間、文字や言葉、色々な知識を教えて貰っている。真っ先に書けるようになった文字は「トントン」という文字、その次に自分の名前だった。「トントン」と書いた紙を見せた時には、よく分からないけどトントンは複雑そうな顔をして、自分のことを強く抱き締めてくれた。
　その抱擁の意味は未だに分かっていないけど、複雑そうな表情の中にも嬉しさが見えて、自分まで嬉しくなってしまった。

　そうしてトントンに匿って貰う日々が続いて2年程。この世に生を受けて7年が経とうとしていたある日のことだった。
　相変わらず両親の機嫌は悪く、食事も与えられないまま外へと放り出され、それを見計らってトントンが家へと連れて行ってくれた。いつものように簡単な手当てをしてくれ、食事も済ませ、読書を楽しんで家の裏口へと帰った。
　いつもなら、遅くても日付が変わるまでには家に入れて貰えるのに、日付が変わろうと、明くる日が来ようと、家に入れて貰えることはなかった。
　勝手に家の中に入ろうものなら、後できつい仕置きが待っていることを理解しているものの、何だか嫌な胸騒ぎがして、家の中へと入った。

「......え、？」

　いつも自分を虐げる存在は、動かない肉塊となってそこに横たわっていた。

　床はどこまでも赤く、困惑する自分の顔をその赤い水面に写していた。