探す【男主】 (ページ6)

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　トントンの家にお世話になって数日、出かけ帰りにトントンはよく不機嫌になっていた。
　理由を聞いてもはぐらかされてしまい、無言で力強く抱き締められる。抱き締め返せば少し機嫌が良くなるので、トントン自身の昇華しきれない悩みか何かだと、そう思っていた。

　トントンの家族が総出で出掛けていたある日の昼間、「絶対外出たらあかんからな」というトントンの言い付け通り、トントンの自室で読書をしていた。
　すると、コツ、コツ、とガラスに何かがぶつかる音がしたので、ガラス越しに外を覗き見た。

「うわ、ユーレイじゃん」
「ほんとだ。トントンこんなのと一緒にいるから最近遊べなくなったのか」
「母さんと父さん死んでも泣かなかったらしいぜ」
「バケモノじゃん！こえー！」

　ゲラゲラと笑いながら、トントンの家の前から去っていく数人の子供。

　ああ、そうか。彼は優しいから、こんな陰口を言われている、なんて言えなかったのか。
　僕は、彼の優しさに、甘え過ぎていたんだ。

　最近のトントンの様子に、ストンと納得がいった。
　自分のせいで、彼は彼の自由時間を持てなくなってしまったし、彼の名誉に傷を付けてしまっていた。
　そうだ、自分は、この家の家族ではないのだ。

　トントンの机と、紙とペンを借りて、トントンから教わった文字を書き進めていく。
　何故だか、胸の奥がズキリと傷んだ。