探す【男主】 (ページ7)

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　それから数十分後、扉が開く音でトントンとトントンの家族が帰ってきたことを知った。紙は急いでポケットに仕舞い、「おかえりなさい」と出迎える。
　トントンは帰ってくるなり自分の姿を見付け、「何もなかったか？外出てへんか？」と心配してくれるので、それがとても優しくて、温かくて、ついクスリと笑ってしまった。
　そんな自分の様子に「なにわろとんねん」とちょっと不機嫌になってしまったけれど。

　帰ってきてからは夕飯を食べさせて貰い、寝るまでの間はトントンの部屋で寛いだ。
　トントンは博識で、何も知らなかった自分に色んなことを教えてくれた。自分の居る国の名前、他の国の名前や、その書き方。トントンはこの国の軍隊(正確には違うようだが、それでいいと言われた)に入りたいのだそうで、そのために日々勉強をしているのだそうだ。
　眠くなってきたら、一緒のベッドに入って、トントンに抱き締められて眠る。それがここ最近の日常だった。

　真夜中。人知れず目を覚ました自分は、拘束の緩まったトントンの腕から、トントンを起こさないようにそろりと抜け出した。
　体温が消えたことに気付いたのか、「うぅ......」と唸るトントン。

「A、A......」

　自身の名前を呼ばれてドキリとしたものの、トントンの目は開いておらず、寝言だったことが分かった。
　そっとトントンの頭を撫で、自分の使っていた枕の上には、昼間に書いた「トントンへ」という紙を置いておく。

　ありがとう、トントン。こんな自分に手を差し伸べてくれて。

　トントンの家族も起こさないように、そっと扉を開ける。履きくたびれた靴は、音を立てることなく自分を外へと導いてくれた。