探す【男主】 (ページ9)

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　歩いて、歩いて、歩き続けた。
　トントンの家から出てきて、どのくらいの時間が経ったのだろう。食事も水分もとっくに消化され切ってしまって、足元が先程からふらついて仕方ない。

　ぐら、と倒れそうになったのを必死に踏ん張って耐える。辺りは人気の無い森で、こんなところで倒れれば何かに食い尽くされて死んでしまうだろう。
　ああ、それも良いのかもしれない。今まで無意識に考えることを避けていた「死」。すぐそこまで迫ってきているというなら、いっそのこと身を委ねてもいいのではないか。

　ふらついた足元が地面を踏みつけられず、ドサリとその場に倒れ込んでしまう。目を開けていることも億劫で、ゆっくりと瞼が瞳を覆った。
　脳裏に見たのは、悲しそうな顔をするトントンだった。

　身体が何かに包まれているのを感じた。
　これが「死」なのか。死んでいるのに意識があるものなのか？
　次いで、食べ物の匂いを感じ取った。嗅いだことはないけど、安心する匂い。

　目を開けてみれば、木で作られた天井と、自分をのぞき込む顔が見えた。

「おぉ、目覚めたか」

　腹減ってるか？まずは風呂か？と尋ねてくるものの、起き抜けで思考がうまく纏まらない。声を出そうとしても、喉が乾いて音にならない。

「......まずは水か」

　覗き込んでいた「顔」、その"男"は、そう呟いてどこかに消え、そして何かを持って戻ってきた。

「これ飲んどけ、喉乾いたろ。まあ1週間も寝込めばなあ」

　差し出されたコップを、ゆっくりと起き上がって受け取る。久方ぶりに飲んだ水分が、身体に吸収されていく感じがした。

「取って食やしねえから、まずは飯だな。話も食いながらのが手っ取り早い」

　そう男が笑うと、「おーい、ゾム」と奥の部屋から誰かを呼んだ。ドタドタ、と音がした後、自分と変わらない歳の少年が、勢い良くこの部屋へ入って来た。

「飯食うぞ、準備手伝え」
「おん」

　緑色の服が良く似合う、少年だった。