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「遠慮せず食え食え」
そう言って出された食事。トントンの家で食べさせて貰ったものよりも見目は劣るかもしれないが、それでも自身の腹を満たすには関係無く、充分過ぎるほどだった。
ガツガツと手を止めること無く食べ進める自分に、男は笑う。「元気そうで何よりだ」と。
「ゾム......ああいや、そこのやつが連れて来た時には死人かと思ったが、食える元気があるなら良い」
言い終えると、頭をわしゃわしゃと撫でられた。強引だが優しさがある撫で方に、嬉しくなってしまった。
「お前をこの森で見付けたのはこいつだ。ゾムって言う。こいつを拾ったのは俺だがな」
食事を終えると、緑色の服を着た少年がこちらへそろりと歩いてくる。彼が助けてくれた、ということなのか。
お礼を伝えるために、未だベッドから身体を起こしているだけの体勢だが少し整えて、深く礼をする。
「ゾム、さん。助けてくれて、ありがとう」
そんなにしっかりとお礼を言われると思っていなかったのか、「え、いや」とゾムはまごついている。そんな自分達の様子がおかしかったのか、男は大きな声で笑った。
「こいつ、お前が起きるまでずっと「こいつと友達になれるかな」ってワクワクしてたんだぞ？感謝してんなら、友達になってやってくれ」
そうだったのか、と驚いて彼を見ると、服についたフードを深く被り直してそっぽを向いている。ちらりと見える横顔は、心無しか赤い。
「.......さん、とか、いらんねん。ゾムって呼べ」
そっぽを向きながらも、しっかりと声は届いた。ゾム、と問い掛けるように呼べば、彼は先ほどより少しばかり嬉しそうに、こちらを見た。
トントンと彼は似ても似つかないけれど、何故か少し、トントンのことを思い出してしまったのだ。
「...お前、名前は？」
不安そうに尋ねる彼に、精一杯微笑んで答える。
「僕は、A」
男はそんな様子を、ただ微笑ましそうに見守っていた。
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作者名：金欠 | 作成日時：2024年3月31日 21時
