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 教室に着くなり藤崎くんは鞄から一枚の紙を取り出して、それを私に差し出した。



「なにこれ」

「委員会のやつ。昨日の帰り担任が持ってきた」



 少し皺のついた紙を受け取って、適当に目を通す。それは図書委員会についての書類だった。主に活動内容や年間スケジュールが記載されている。決まった曜日に来て貸出業務、棚の整頓。時たまポップを作ったりするとのこと。

 一通り読み終えて、ふと思いつくことがある。



「ねえ。これのどこが面倒くさい?」



 そこそこ前の話になるが、係決めの時に彼はそう言った。私が問い詰めるとあからさまに歯切れが悪い感じ。



「あれ、嘘なんだよね」

「なんで嘘つく必要があった?」

「ちょっとした冗談のつもりだったんだけど」



 面白そうだったし、と後から余計な一言を付け加えた。
 つまり私は、彼のこんなしょうもない好奇心に半ば付き合わされたと言う訳で。もう何度目か分からない大きな溜息をついてしまう。



「定期的にやる集まりも、大体はどっちかが出席すればいいらしいから」

「やけに詳しいね」

「まあ。知り合いが昨年やってたって聞いたから」

「それって杉岡さんとか秋山さん?」



 藤崎くんの知り合いと聞いて真っ先にその二人が思い浮かんだ。『すぎる』と呼ばれる杉岡さんと、『しゅーさん』こと秋山さん。どちらも藤崎くんがまだ休んでいたときに出会った人。話を聞く限り、かなり仲が良さそうな気がする。



「いや、それは違うけど……なんであいつらの名前知ってんの?」



 藤崎くんが私の発言を疑問に思うのは無理もない。
 私は彼の口から直接交友関係を聞いた訳ではないのだから。本人からしたら、自身のプライベートなことを知られていて気味が悪いだろう。私だったらそう思ってしまう。



「そりゃあまあ。俺と穂高さんはそういう仲なんで、ね……」



 弁明の言葉を発しようとした矢先、第三者の声がした。驚いた私たちは二人して顔を向ける。

 教室の廊下側の窓枠に頬杖をつき、にこやかな顔で手を振る秋山さんの姿があった。何故ここに居るのだろうか。



「うわ〜穂高ってば趣味わっる〜」



 にやにやと笑う藤崎くん。その顔は絶対に嘘だと分かっている。分かって揶揄っているのだ。

 それに対する秋山さんも秋山さんで、「悪くないわぁ!」などと反論している。


 全く男子高校生のノリについていけない私はただ引き攣った愛想笑いしかできなかった。

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ぱるぱる(プロフ) - けみすぅさん» お待たせしました……!ありがとうございます、頑張ります!! (8月12日 15時) (レス) id: 7a8872ac1a (このIDを非表示/違反報告)
けみすぅ(プロフ) - お待ちしておりました…、!!無理ない範囲で更新頑張ってください楽しみにしてます…♡ (8月9日 4時) (レス) @page18 id: 32d0e6279e (このIDを非表示/違反報告)
ぱるぱる(プロフ) - 八分雨_さん» ありがとうございます!!!!エモすぎて泣きました…… (2021年6月12日 20時) (レス) id: c973c4b273 (このIDを非表示/違反報告)
八分雨_(プロフ) - 初コメ失礼します!作品めちゃくちゃに大好きです!…夏終わりませんよね… (2021年6月10日 6時) (レス) id: 1ae85e2dd8 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるぱる(プロフ) - 散歩雨さん» アッアッアッありがとうございます!!!!そう言っていただけてとても嬉しいです!伸びるように更新頑張ります! (2021年5月28日 21時) (レス) id: be4d8b08b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱるぱる | 作成日時:2021年5月12日 0時

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