25:その言葉、撤回はなしやからな ページ25
「───広い世界を、自分の目でみないと損ですよ」
無理やり、俺の手を取った彼女は顔を真っ赤にさせたままそう言い張る。人からの酒を次々と、快く受けて、馬鹿みたいに愛想を振り撒きながら笑っている彼女は、自分とは真逆の存在だ。…見たこともない格好をして、この世界についての当たり前の知識を何一つも持っていないのに、自然と彼女の周囲には人が集まる。
一歩離れて、彼女を見ていたはずだった。
それなのに、この距離は何なのだろう。
「ロボロさん、私と一緒に旅に行きましょう？ もちろんお金の保証も安全の保証も出来ませんが……一歩踏み出すのにいい機会だと思いませんか？」
「なんの機会やねん」
「そりゃあ、たくさんの人とお酒を飲む機会ですよ」
緩やかな笑顔を浮かべて、彼女は手に込める力を強める。真っ直ぐに、人の顔を見たのは久しぶりだ。そして人の顔を見て目線を逸らされないのもまた久しぶりのことで。
「そんな酒、好きちゃうねん…」
「なら好きなお酒を見つけにいきましょうよ！私は、ラム酒が好きです！モヒート最高！」
「ら、らむ…？」
「───退屈はさせませんから。ねっ？」
酔っ払いの戯言。
それは分かっているはずなのに、……手から伝わる彼女の温度を手放すには惜しかった。
「その言葉、撤回はなしやからな。…A」
.
.
.
「あー……頭、痛い」
忌々しい太陽の光を浴びて、しゃがれた声を出す。村人たちは私よりも遥かに腎臓や肝臓を酷使しているはずなのに、朝から肌艶よく働いているから驚きを通り越して恐怖心を抱いてしまった。
「Aちゃん、起きたか〜？昨日、言っとった像、こんな風でどうかの？」
「像…？」
ズキスギと痛む頭を抑えながら、目を細めて逆光に立ち向かう。すると目の前には、太陽と月のシンボルを持つしんぺい神を示すマークの入った銅像がそこに建ててあった。
「いやぁ、君の発想には驚いたわい。こんなにも美しい人物…見たことなかったからのう」
「…え、あの、…これって？」
「これがAちゃんの……この世を救う勇者様の信じる"カミサマ"なんじゃろう？」
村長の瞳が輝いたまま私を見つめる。昨日の私は随分と無駄話をしてしまったようだ。
「…そうですね。私の信じる神様です。」
その言葉に満足げに笑い、村長は村人を集め始める。まだ朝だと言うのに、彼らはみんな元気なもので…ものの十分ほどで昨日宴会が繰り広げられた広場は人で賑わっていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 279人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「wrwrd」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
#みなせ(プロフ) - はァｯバチくそに大好きな作品を見つけてしまった…!!!いや、見つける運命だったのかもしれない!!!!!!!rbrと夢主ちゃんが最初に仲間になるの…神では???続き楽しみに待ってます!!!!!!!体調にお気をつけください〜! (4月30日 17時) (
レス) @page35 id: af4a079e32 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - おもちさん» コメントありがとうございます…！最新話までお読みいただき感謝しかありません。おもち様もご自愛くださいませ！今後ともよろしくお願いします。 (8月2日 13時) (レス) id: 34023827fc (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 紅さん» コメントありがとうございます…！面白いと言っていただきすごく安心しました！ゆっくり更新ではありますが今後ともよろしくお願いします。 (8月2日 13時) (レス) id: 34023827fc (このIDを非表示/違反報告)
おもち - 次の展開が楽しみすぎる！無理せず頑張ってください！ (7月25日 22時) (レス) id: 5f4d3dd2ed (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (7月24日 17時) (レス) @page29 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
