お姫様と最初の仕掛け ページ10
吉祥寺愛海は狼狽えながら如何に自分が悪くないか伝えるか悩んでいるようだった。私は笑いそうになるのを堪えて、シャークん君に抱き締められたまま涙を零す。
「A…大丈夫か?」
「シャークん君…。私、ただ吉祥寺さんと仲良くなりたかっただけなのに…。」
「はぁ!?アンタまだそんなこと言って…!」
「…これ以上お前と話してても無駄だな。もうAに関わんな。行こう、A。」
シャークん君は最後まで吉祥寺愛海を睨みながら、軽音楽部部室を出た。そのまま部室に戻ると、カルアちゃんがニコニコ笑顔で迎えてくれた。盗聴器の音声聞いてたんだろうな。
「お帰り、A!案外チョロかったね、吉祥寺サン。」
「ただいま〜。すぐ手出してくれて助かった〜。」
「そうだよ、A髪掴まれたんだよね!?大丈夫!?」
「ちょっと痛かったけど大丈夫だよ。それに…これであっちから手を出したって証拠が出来た。」
私は胸ポケットに忍ばせていたボイスレコーダーと小型カメラをきりやん君に差し出す。
「ナイスA。バックアップ取っとくわ。」
「うん、よろしく〜。」
でもこれだけじゃまだ足りない。今回の件に関して、目撃者はいない。シャークん君は証人にはなってくれるけど、目撃はしてない。…もっと、人が大勢いるところで、沢山の目撃者がいる中で、決定的なことをしてくれたら助かるんだけど…。
「A、次は何すんの?」
「…沢山の目撃者が欲しいよね。」
「でも吉祥寺さんもそこまで馬鹿じゃないでしょ。いくら煽られても人の目があるところじゃ姉さんに手を出さないと思うな〜。」
「だから手を出させたくなるような何か…若しくは、私の自作自演であっても、吉祥寺さんがやったと思わせるような…。」
悩んでいるとくす、とスマイル君が笑みを零す。
「焦らなくても吉祥寺愛海みたいなタイプはすぐチャンスをくれるよ。自分で自分の首を絞めてるとも知らずにな。」
「あは、カルアもスマ君と同じこと考えてた。どうせ吉祥寺サンは近い内になにか仕掛けてくるよ。カッターキャーとか。それを逆手に取ってあげればいいんだよ。Aの得意分野でしょ?」
「…そうだね。カッターキャーなんて、上手くいくわけないのに。馬鹿だなぁ。」
自身の腕に刻まれたカッターの傷跡を見ながら、私は小さく呟いた。
「…カッターなんて痛いだけなのにね。」
そしてその傷を隠すようにリストバンドをつけ直した。
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作者名:さくらもち | 作成日時:2024年3月20日 17時