◇ ページ18
階段を上がったり渡り廊下を通ったりして幾分か経った頃、ある一つの教室の前で先頭を歩いていた紗緒が止まった。つられて皆も歩みを止める。
ドアの上には"ゲーム部!!!"と丁寧な字体で書かれたカラフルな看板が吊り下がっており、拘りのあるソレは素人目で見ても業者並の出来であることが伺える。
中から声は一切聞こえないが、気配が三つ程あるので人は居るのだろう。静かなゲーマー達が集まっとるんかな？やとしたら失礼やけど紗緒に声を掛けたんは失敗やったで。
小気味良いノックが教室に吸い込まれ溶け込む。
「すんませーん！昨日勧誘された者なんで「はい！！！！！」…ちっす」
突如耳を劈いた大声に身体が固まる。
紗緒の言葉を遮り勢い良く扉から出てきたのは、簡潔に言えばエミさんにとてもよく似ている人だった。
二度目*とは違い瞳は薄茶色やけど多分この人絶対今世のエミさんやんね。
余程驚いたのかそれとも人見知りが発動したのか、希は鏡を初めて見た猫の如く素早く私の後ろに隠れ、恐る恐ると言ったふうに春を模した屏風の様な髪色の彼を観察し始める。(尚、私の知る限り未だ彼に春は来ていない)
そんな様子の希に気付いたのか、エミさん(仮称)はやっちまったとでも言いたげな表情をし丁寧に謝罪の言葉を零した。
「彼から話を聞いていたので少々舞い上がってしまいました…」
「"少々"…？」
「めっちゃ、の間違いやなくて？」
「え、イヤッ、あのぉ〜〜〜ね！……ンﾞンﾞッ！！さて、どうぞ中へお入り下さい」
咳払いを一つ落とし、真面目モード(?)に切り替えたらしいエミさん(仮称)に室内へ案内される。
中はゲーム機とお菓子、飲料容器のゴミが散乱している如何にも男子高校生らしい部屋＿＿＿ではなく、コードまで綺麗に整理整頓された清潔感のある心地良さげな空間が広がっていた。なんか思ってたんと違う…
「ちらほら来てない人が居るんですけど用事が済み次第来ますので、取り敢えず皆さんは此処で座って待っていて下さい。
あ、お茶いります？」
「分かりました。お茶は……お前らどうする？」
「俺はええよ、まだ自分のあるし」
「おっ、オレも……」
『私も大丈夫です』
「分かりました。では少々お待ち下さい」
敬語でエミさん(仮称)と対話する皆、違和感あるなぁ……まぁ仕方ないんやけど。
俯き、薄い苦笑が表に出るのを気合いで堪えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 192人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怜巫(プロフ) - まるさん» コメントありがとうございます。イマジナリーッペンは自分でもお気に入りの造語です(笑)。ご期待に添えられるようなお話かは分かりませんが、気長にお待ち頂ければ幸いです… (11月20日 15時) (
レス) id: 42dc5a7528 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 今では珍しいパンゾンビ、P.6で出てきて懐かしすぎて久々に見に行ってしまいましたwイマジナリーッペンの語呂の良さ、微笑んでしまうようなやり取りetc…明日が一応更新日ということで、気長に楽しみに待っています！！ (11月18日 20時) (レス) @page33 id: dba6e6f19e (このIDを非表示/違反報告)
怜巫(プロフ) - ワカメさん» お褒めいただきありがとうございます！遅筆ですが頑張って続きを作成中ですのでこれからも本作品を何卒宜しくお願いします！ (10月3日 20時) (レス) id: 138669c149 (このIDを非表示/違反報告)
ワカメ - ものすごく面白いです！続き楽しみにしてます！ (10月3日 18時) (レス) @page22 id: 103dc78d5a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜巫 | 作成日時：2023年8月17日 5時
